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鈴々はその後も一騎当千の如く、黄巾党を次々と切り裂いていく。
そして、その後方では、朱里が兵の指揮を取っている。
アイシャ「後方より味方が来た!義勇兵の勇士たちよ!今こそ力の全てを持って敵を殲滅するとき!」
いつの間にか、側に来ていた愛紗も、兵に指揮を出す。
やっぱ本家本元には敵わないな……
そう苦笑を洩らし、四肢にもう一度力を入れると、混乱している黄巾党に向かって拳を、脚を放っていく。
「りぁああああ!!」
後はもう、簡単だった。戦意を喪失した敵が敗走していくのを、狩っていくだけ。
後を兵たちに任せ、俺は大きく息を吸う。身体には敵の血が飛び散っており、気持ちが悪い。
あぁ早く風呂に入りたい。
そんな事を考えていると、桃香と雛里が走ってきた。
トウカ「ご主人さま!怪我とかしてな…っ!こんなに血が」
ヒナリ「桃香さま~、ま、待ってください~」
桃香は俺に駆け寄るなり、俺の身体についた血に慌て、あちこち触ってくる。
雛里は、小さな身体を一生懸命走らせている。
「大丈夫だよ、桃香。俺はどこも怪我してな…っ!」
桃香の指が左の頬を触った時、ちくっ、という痛みがした。
トウカ「ここ切れてるっ!今拭いてあげるから。」
桃香は桃色の布を俺の頬に当てると、血を拭っていく。
「だ、大丈夫だよ、桃香。こんなのかすり傷だって。」
俺のそんな思いは桃香には届かずに、傷だけでなく顔についた返り血までも拭いてくれる。
それだけで恥ずかしいのに、駆け寄ってきた雛里は自分がやってもらっている訳でもないのに顔を赤くし、いつの間にか来ていたのか、鈴々は囃(ハヤ)し立て、朱里はニコニコと笑い、愛紗に至っては何故か不機嫌だ。
トウカ「はい。これでいつものご主人さまの完成♪」
「あ、ありがと……」
こうして俺たち義勇兵の初陣は勝利で収め、その場にはしばらく俺たちの笑い声が木霊した。
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