プロローグ

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「よそみしちゃだめだよっ」 「大丈夫だよ。綾は心配性だなあ」  ははっ。と笑いながら、小さな子供をあやすように、彼の手があたしの頭に触れる。  大きくて温かい、男の人の手。 「……あなたの吐いた煙が、羽になって落ちてきたのかと思ったの」  笑われるかもしれないけど、別にいいと思ってそう言った。 「羽? なんのことだい?」  それには答えずに黙っていると、彼も外に気付いた。 「あっ! 雪だ。今年の初雪じゃないか」  今年で20歳になったのに、子供みたいなはしゃぎかた。    思わず笑ってしまった。 「綾にはこの雪が、煙が羽になって落ちてきたように見えたのかい?」 「そう見えただけよ」  少しムキになって言い返してみる。 「だとすると、ぼくは、まるで魔法使いだなあ」  彼はいつも困った顔をして、どうにかあたしを笑わせようとしてくれる。
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