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「…で、ここで何をしろって? 炊事掃除に洗濯? それとも、夜のお相手?」
「別に何も手伝ってくれなくていい。男の一人暮らしだ。一通りは問題ねえ」
「あ、そう」
「マスコミがお前の家をかぎつけて、待ち伏せしてる。だからここで身を隠せ。それとな、夜のご奉仕だ?馬鹿言うんじゃねえ。俺は色香のある大人の女が好きなんだ」
「……何が目的?」
あたしは氷室との面識はない。
助けられる理由が知りたかった。
「理由か。乗りかかった船ってやつだ。事情を知ってハイサヨナラってわけにもいかねえだろう」
「お人よしなのね。あなたも一人?寂しいだけじゃないの?」
少しの嫌味を込めて、そうつぶやく。
「……だからって娘に手出したりはしねえよ」
氷室は背を向けたまま、そう言った。
娘。
ああ最初に報道陣から守ってくれたとき、この人あたしを娘だと言ったんだ。
「ありがとう。パパ」
「その呼び名はやめろ。まだそんな大きな娘をもつほどフケてもねえよ」
さっきは娘と言ったくせに。なにコイツ?
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