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リビングを通り、六畳間程の部屋に通された。
結構片付いている。
フローリングの床とベッドとタンス。
窓にはちゃんとカーテンもついていた。
普段から使っていない部屋みたいで、何の匂いもしなかった。
「風呂は奥の扉だ。自由に使え。それに覗いたりしねえから安心しろ」
「仮に覗いたとしても、こんな体じゃ欲情しないでしょ?」
皮肉を込めて、言い放つ。
氷室は答えなかった。
歩くたびに、手を伸ばすたびに、ズキンズキンと痛む。
ただ歩くことがこんなに辛いなんて。
ただ扉を開けるだけがこんなに辛いなんて。
「家の鍵を渡しておく。スペアだが無くすなよ」
鍵の束から一つを外して、あたしに渡してくれた。
「……」
一応受け取る。
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