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静か…。
病院のベッドほど白くはないけど、茶色ベースの板に、光量の足りない蛍光灯。
これで雨漏りかひび割れでもしていたら、まるであたしの心みたい、と思った。
ドアがノックされた。
「そろそろ行くぞ」
時計も携帯電話も持っていないから、時間が分からなかった。
(大破した携帯なら持っているけど)
「もうそんな時間?」
「さっきお前さんの家を見てきた。記者は一人も居ないみたいだ」
静かだなと思っていたら、出かけていたらしい。
「あたしが逃げるとか、そういうこと考えなかったの?」
氷室に尋ねた。
「別に誘拐したわけじゃねえからな。お前がそう思っているんなら好きにすりゃいい。
止める権利は俺にはねえよ」
「そう」
移動中の車内で、特に話すことはなかったのでずっと黙っていた。
事故のこととか、今の心境とか、根掘り葉掘り聞かれたりするんじゃないかと構えていたけど、氷室が聞いてきたのは、
「音楽は何か聴くか?」
それだけだった。
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