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文久三年 五月
異人の到来に攘夷派の浪士達が殺気立ち、着々と治安が悪くなりはじめた京都。
そんな黄昏時になりかけ、人気も徐々に少なくなった京の街中を闊歩する三人組がいた。
「なぁ、早くしねぇと
真っ暗になっちまうぜ?」
着流しの上に、なぜか女性用の華やかな着物を羽織るという変わった格好をした、無造作な髪型の男が言う。
しかし、言ってる事とは裏腹に、男の口調に焦りは微塵も感じられない。
「言われなくてもわかってるさ、でも急ぐのはどうも私の趣味じゃないんだよねぇ」
ふぅ、と肩を竦める仕草で笑う、長髪を高い位置で結ったもう一人の男。
着流しに羽織りという至って普通な格好だが、この男もさっきの男も、まだ肌寒い今にしてはいくらかくだけた服装をしている。
「はぁ……、私はこんなところで“狼”に出会いでもしたらと思うと……急いで帰りたいこと、この上ないよ」
一歩後ろに付いていた羽織袴姿の三人目の男が呟くように漏らした。
1番きっちりとした格好で、少し長い前髪に襟首より少し長いさらりとした短髪の青年だ。
「はっ、そんな神の思し召しみたく会うこともねぇだろうよ」
「そんなの分からないだろうに。
大体なんでそんな軽装なんだ?
稔麿に至っては脇差しすら刺してないではないか」
着流しの男の馬鹿にしたような言い方に袴の男は一歩下がったところで腕を組み、不機嫌そうに答えた。
稔麿と呼ばれた男は二人の会話に愉快そうに笑うだけだった。
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