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とにかく喧嘩っ早い晋作と、どんなに行動は過激であってもまず綿密に計画を立てたがる冷静な稔麿は、友人としての仲は良いが、意見の相違は少なくない。
だが、殊に桂をからかう時だけは驚くほど息が合った。
恥ずかしさで顔を伏せていた桂が顔をあげて、返事のない二人を見遣る。
晋作は上体を折り曲げ腹を抱えながら、稔麿は口元を手で隠しながら、共にぷるぷる震えていた。
「なっ、どうしたんだ!?」
「ど……どうしたもこうしたも、お、おめぇ………ぶっ!」
何かを言いかけてから、また晋作は腹を抱える。
「「くっ、ははははっ!」」
耐え切れなくなって盛大に噴き出した二人に、桂は呆気にとられ目を丸くする。
それに気付いた晋作が目頭の涙を擦りながら、笑いすぎでヒィヒィ鳴る息を整えて言う。
「お、おまえっ……そんな理由で立ち止まってたのかよ!しかも男に可憐て……ぶっ、ははは!」
「し、晋作!あんまり笑ってはいけないだろっ……ふはっ!わ、私たちは顔を見てないけど、よっぽど美少年だったのだろうよっ、はははっ!」
二人の言葉を呆然と聞いていた桂だが、やっとのことで心底馬鹿にされてると理解したのか、一度は落ち着いた顔がまた一気に真っ赤になった。
「なっ!お前たちは見てないからそんな事を言うのだ!見てないからっ!!」
「わーかったって、悪かった。
ほら、そんなに大声出してたらば恐ろしい“狼”に見つかるぞ」
晋作が笑い過ぎで溜まった涙をごしごしと擦りながら、なだめるように言った。
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