序章

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「大体、まだ五月で寒いというのになんでそんなに薄着なんだ? そんな格好で長く外にいたらば、風邪を引いてしまうだろう!」 早く付いて来い!と桂は捨て台詞のように言い放つと先程よりも、ゆっくりな歩調で歩き出した。 桂の言葉に晋作までもが髪を掻き回していた手を止めて、キョトンとした顔になる。 「……なぁ、稔麿。今のって」 「うーん。きっと晋作が考えてる通りじゃないかねぇ」 二人は顔を見合わせる。 お互いの目元がだらし無くさがっているのがすぐわかる。 「「……っく、はははははっ!」」 急に笑い出す晋作と稔麿に、今度は桂が驚く番だった。 「なっ、何笑ってるんだ?」 「ははっ、いんやぁ俺達って愛されてるなぁって。な、稔麿」 「ふふ、そうだねぇ」 二人は、驚いて足が止まった桂のところまでつくと、晋作は桂の肩に腕を廻し、稔麿は晋作とは反対側にまわる。 そして三人組は横一列に並ぶと、楽しげな声を残して黄昏の京の薄闇の中へ溶けていった。 この三人の男、名をそれぞれ 吉田稔麿(ヨシダトシマロ) 高杉晋作(タカスギシンサク) 桂小五郎(カツラコゴロウ) 尊攘倒幕派の要人として、名を馳せる、長州潘の志士であった。 .
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