12月の烏

2/2
前へ
/20ページ
次へ
登場人物に涙を流させて読者の涙を誘うのは、ある意味簡単だ。 登場人物に血を流させて読者に痛みを伝えるのも、簡単だろう。 登場人物を笑わせて読者を共に笑顔にするのも、多分簡単なはずだ。 問題なのは、登場人物が笑っているのに読者を泣かせたり、登場人物がダメージを受けているのに読者を笑わせたりすることが、いかに難しいかということ。 そして、それをさり気なくこなしている作家の力には、意外と気付きづらいということだ。 だが、それは特別なことでもなんでもない。 生きている人間がいて、意思疎通をしている限り、当たり前に起きていることなのだから。 演劇などにおいて、「普通に歩いたり、普通に呼吸するだけの演技」が、実は一番難しいという。 まぁ、詰まるところ、最も当たり前なことが最も認識しづらいという、陳腐な結末に落ち着く訳で。 『当たり前のこと』   09/12/04
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加