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例えば、エンピツよりも消しゴムが好きだ。
それも、消しカスがまとまるタイプじゃない。
糸屑みたいなカス。
安いレースみたいなカス。
そんな、個性豊かで掃除しにくいカスを盛大に撒き散らす、消しゴムが好きだ。
それに、そいつに消されていく言葉が好きだ。
選び損ねてしまった言葉たちが、たまらなく愛おしい。
(悪いね、ここは君の出番じゃなかったよ)
(また次、頼むね)
つぶやいて、微笑んで、容赦なく消す。
その感触が好きだ。
消している、ということは、
書いていた、ということで。
何かを書いていた時の自分が好きだ。
残す言葉、残さぬ言葉。
そんなことは先に譲って、ひたすら書き続けていた、自分が。
そうだ!
消しもせず、書きもせず、漫然とエンピツを弾くだけの自分など失せてしまえ!
…書かなければ。
消すためにも書くのだと思えば、もっともっと書かねばならぬはずだ。
消しカスを……盛大に、撒き散らして。
『始まりに代えて』
09/06/22
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