透明な距離

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電車から元気よく駅へと降り立った私は、 『ん~、晴れた晴れた』 背伸びをしながら言った。それに続いて駿介達も降りた。ホームからは、青い海と空が一望できる。空には雲一つなく、唯一あるのは燦々と輝く太陽だけ。木の緑の混じる海の方には泳ぎに来た人々が黒い点々に見える。駅に降り立ったのは私と駿介を含むいつものは6人。高校の夏休みを利用して陽平の親戚が営む民宿に泊まりに来ていた。 『でも、なんか心配だなぁ』 私はふともらすと、 『まぁ陽平の親戚もいるし、大丈夫だろ。それに俺らも高校生だし』 私の心配に駿介が答えた。記憶を失って初めの内は、ギクシャクしていたが最近では、普通に話せるようになった。まだしっくりこないけど 『陽平~。暑~よ、早く行こうぜ』 悠貴が手で顔を仰ぎながら言った。 『荷物も早く置きたいよ。意外と重いんだから』 なつみも言った。 『よし!!じゃあ出発しますか』 陽平は代表者のように手を挙げた。けど 『え~っと。こっちだったかな?』 なんて言っている陽平を見た5人は、一抹の不安を隠せなかった。しばらく歩くと先頭の陽平が 『ここだよ』 と指差した先を見ると民宿にしては少し大きいと思うほどの家があった。あと、私の家と違うのは、でっかい看板に『民宿高嶺』と書いてある。玄関に入り、 『おじゃましま~す。おばさ~ん』 どうやらこの民宿は陽平のおばさんにあたる人がやっているみたい。 『いらっしゃーい。あら』 出てきた女性は、とても優しそうで、 『細目だね』 『あぁ、遺伝じゃないか?』 陽平に実にそっくりだった。 『もしかして陽平かい?しばらく見ないうちに大きくなったねー。おや?友達は女の子もいるみたいだね。どれが将来のお嫁さんだい?』 私達の目は一斉になつみに集まった。 『よしてくれよ。なつみと結婚したら、命がいくつあっても足りないよ』 『なんですって!!』 『いてっ!!』 なつみは陽平に蹴りを入れた。 『陽平をよろしくね。じゃあお部屋に案内しようか』 そう言うとおばさんは踵を返し、歩き出す。私達もスリッパに履き替え後を追う。案内された部屋は6人には少し広かったが男の子が3人いるから丁度いいかな。 『よし!準備して海に行こうぜ』 悠貴はシャツを脱ぎながら言った。 『ちょっと、少しは周りのことも考えなさいよ』 なつみに注文されたけど、そんなのお構いなしで 『堅いこと言うなよ』 って笑ってた。
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