透明な距離

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全員の準備も整い、いざ海へ。さすがに夏休みということもあり、海水浴客でごった返していた。さっき駅で見た黒い点よりも多く感じる。海に着くなり駿介達男3人は真っ先に海へと飛び込んだ。私達女3人は、パラソルの下で荷物番。 『最近の調子はどう?』 『どう?って言われても、初めに比べれば話せるようになったし、駿介の方からも話してくるようにはなったけど、どこかしっくり来ないっていうか』 『まだ名前も呼ばれてないもんね』 と里沙。 『うん』 『そっかぁ』 『なんていうか、今の駿介、凄く近づきにくい。壁があるっていうか、一線引いてるっていうか』 『そんな風には見えないけど』 『それはね、里沙は小学校からの友達だし、なつみは従姉弟じゃん。でも私は、今の駿介の中じゃ高校で知り合ったぐらいなんだと思うの。だからちょっと距離を感じる』 『だったら、今日その距離を縮めちゃいなよ。夏だし海じゃん。駿君のガードも緩くなってんじゃない?ほら、噂をすれば』 里沙は首を海の方に向けた。私も向けると、駿介が1人でこっちに歩いてくる。少しドキドキしてきた。里沙があんなこと言うからだ。そうこうしている内に、駿介は私達の前に来た。 『どうしたの?駿ちゃん』 なつみが聞くと、 『んっ!あ~、いや別に用事と言うか話したい事があって』 と頭をかきながら言った。 『ちょっといいかな?里沙』 駿介の口から出た名前は里沙だった。これには里沙も 『へっ!?』 ヒドく驚いた顔で変な声を出す。 『ここじゃなんだから、人気の無いところに行こう』 そう言って駿介は歩き出す。里沙も急いで駿介の後を追った。追いついたら私の方を向いて、両手を顔の前で合わせ、バツが悪そうに『ごめん』と口パクで言った。私は『気にしないで』と意味を込めて笑顔で手を振った。しばらくして2人は見えなくなった。 『2人が気になる?』 『えっ!?ううん…』 『無理しちゃって。私がかえでの立場だったら気になるけどなぁ…一体なんなんだろう?』 『あれ?里沙と駿介は?』 いつ戻ってきたのか、そこには陽平と悠貴がいた。 『里沙は駿ちゃんが連れて行ったよ。話があるんだって』 『ふぅ~ん』 『いやいや!!ふぅ~ん。じゃないって。まさか、駿介里沙を奪うつもりじゃ』 『バカッ!かえでの前よ』 『あっ!!悪りぃ』 『いいよ、いいよ。』 とは言ったものの2人が消えた方を見ていのに気がつくと 『やっぱり気になる』 って思った。
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