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その頃、2人はというと海水浴場から少し離れた岩場にいた。
『悪いな。急に呼び出して』
『大丈夫。で?話って何?』
『聞きたいことがあって』
『何?かえでのこと?』
『里沙が一番仲が良さそうだからな』
『小学校からの仲だしね。知りたいのはそれだけじゃないでしょ?』
『あいつは…どういう奴なんだ?』
『どうしてそんなこと聞くの?』
『…あいつは俺のことを色々知ってるけど俺は知らない。なんだかそれが不公平な気がして…。それに誰にでも笑顔で接する。そんなあいつにとっての俺はなんなんだろうって思って』
『ふふっ』
里沙に笑われた。
『駿君らしいね。本当に優しいよ』
『はぁ??』
『かえでは、簡単に言うと裏表がないね。だから、いろんな人に笑顔で接するの。かえでにとってみんなは大切な人だし』
『じゃあ、俺は…』
『駿君はね、特別な人だよ』
『特別な人…』
『そう。かえでは駿君が困っていれば、力を貸すだろうし。嬉しい時は、一緒に笑顔になると思う。苦しい時も楽しい時も同じ自覚を共有したいと思う人がその人にとっての特別な人。駿君はかえでの特別な人なんだよ』
『俺はあいつにとって特別な存在』
『そういうこと。じゃあそろそろ戻ろうか。みんな心配してるだろし』
『わかった』
俺達は、元来た道を歩いて戻った。みんな居るパラソルに着くと
『おー、意外と早かったなぁ』
『変なことしてねぇだろうな?』
なんて事言われると思っていたけど案外触れられることなくスルーされた。あいつともそれからは一言も話していない。空を見ると青からオレンジに染まる途中だった。
『そろそろ戻ろうか?』
『そうね』
各々は持ってきた荷物をまとめる。最後に忘れ物が無いかを確認し、民宿への家路につく。
『腹減ったなぁー』
なんて悠貴が言うのを聞きながら。
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