第三章 波乱の幕開け

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アスターは笑みを深くする。 その意地の悪い笑みにイオルは驚く。 「他にも、何かあるのですか?」 こういう反応をしているとき、アスターは必ず何かを隠し持っているのだ。 ゴクッと誰かが唾を飲み込む音が聞こえる。 「法典に書かれていたようにシェファーズでは血筋が重んじられる。長幼の順と後ろ盾、宮廷内の権力という点ではシルヴィア王女はディアナ姫には勝てない。だがシルヴィア王女はある一点だけ、ディアナ王女に勝っている点がある。」 ここまでお膳立てされてアスターが何を言いたいのか分からない人間はいなかった。 「シルヴィア王女はディアナ王女より正統な血筋なのだ。実は、シルヴィア王女の母上の生い立ちを調べたんだ。皆もおかしいと思わなかったか?リリィアードの王室とも縁遠い、片田舎の貧乏貴族の姫をなぜ正妃に選んだのか。誰が見ても、ローザリオンきっての名家の出であるアルグリアの方が正妃にふさわしい。なのにだ。しかし、何よりも血筋を重んじるシェファーズならその理由はわかる。シルヴィアの母上は先のシェファーズ国王の姪だからな。」 誰も二の句がつげられなかった。
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