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無数の本棚に囲まれて、弁護士が喋りだした。
「依頼主の翠婦人は、ご存じでしょうが、探偵さんと刑事さんはご存じないでしょう」
そう言って弁護士さんは、まるで何か楽しい余興のように手を揉み始めた。
僕はこの人を好きになるには、かなりの労力が必要な気がした。
あかりさんは思いきり、コイツ、嫌いだと顔に書いてある。
しかし当の弁護士は気にしない。気付かない。
「さて、今回私が『新しい』遺言の筆跡鑑定を引き受けたわけですが、そもそも何故筆跡鑑定をしなければならなかったかと言えば、『古い』遺言と『新しい』遺言の内容が、全く異なるからです」
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