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弁護士の喋りに慣れてきて、黙って待った。
イライラしても仕方ない。
こんな喋り方なんだから。
「しかし、文字が震える手で書かれたように、細かく波打っているのが解るはずです。
これは改ざんの形跡とは言えませんが、第三者が字の手本を見ながら練習して書けば、書けない事はないとの事です。
弁護士の私の立場と致しましては、残念ながらこの遺言を正式な遺言として、認める訳にはいきません」
少しの沈黙の後、弁護士は翠婦人に謝った。
「申し訳ございません……」
気まずい沈黙に耐えきれなかった僕は、話の方向を切り替えた。
「この遺言が正式であるかないかは別にして、一連の事件や出来事においては、やはりかなり重要だと思います。
新しい遺言の内容を確認させていただけますか?」
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