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翠婦人が発見した、翠婦人に有利な遺言。
これが本物なら、話が出来過ぎているし、偽物なら出来が悪過ぎる。
遺言の二枚目を作る必要性がまるでない。
一枚目の右下の方にでも、サインすればいいのだ。
いつの間にかあかりさんが隣りに来て覗き込んでいた。
あかりさんの顔がすぐそこにあったので――見掛けは美人なのになぁ――と場違いな事考えてしまった。
あかりさんは、僕の視線に気付き、また怒ったように言った。
「何よ!私は見ちゃダメなわけ!?」
僕は『どうぞ……』という他なかった。
あかりさんに遺言を渡し、僕は弁護士と翠婦人に言った。
「考えるまでもなく偽物ですね……」
翠婦人は下向いて唇を噛んでいる。
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