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弁護士は少しムッとして言った。
「では、翠さんが偽造したと?」
僕は慌てて否定した。
「違いますよ!
この偽の遺言を書いた人物が特定できたわけではありません」
『何故この弁護士が必死になって否定するのか?』と疑問に思ったが、それには悟られないよう注意して話しを続けた。
「この偽の遺言は確かに翠婦人に大きな見返りがあるように見えますが、一つ大事な事を忘れていませんか?
あなたが教えてくださったんじゃないですか……
古い遺言の方は、財産を一人にしか相続させないと書いてあるんでしょう?
今回の偽物は……」
「四等分……」
翠婦人が呟いた。
「その通りです。
良いですか?この偽遺言の目的は財産を均等に分ける事」
僕は一旦言葉を切って、此処に居る全員の顔を見た。
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