探偵

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ずれた眼鏡を左手の中指で持ち上げて、立上がろうとした僕に、良太郎は目を瞑ったまま話しかけてきた。 「ところで訓太…… 何やってんの……」 お前のせいだと言いたい気持ちを押さえて、僕は慌てないように心掛けて、こう言った。 「……良太郎があんまり気持ち良さそうに寝てたから、その……迷ってたんだよ。 その……起こそうかどうかをさ……だから、ホームページの立ち上げが完了したんだよ、うん」 右目を薄く開けてコチラの様子を伺いながら、良太郎は、のんびり答えた。 「そうか……悪かったな、気を使わせて……それにしてもスリッパを右手に握り絞めたまま迷うなんて、なんか変わってるな……」 この男はこういうやつなのだ。 全てを理解していながら、弁明の余地があるように見せかけ、コチラを誘導してしまう。 弁明させるだけさせてから、回りくどく、それでいてねちっこくからかうのだ。 恐ろしいくらい直感的で、頭がよく、それでいて性格が捻くれている。 人間の中身を構成する要素が、最悪の組み合わせで成り立っている。 何より悲しいのは、彼が僕の数少ない友人の一人だという事だろうが……
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