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「ご、ごめんなさい……」
健吾は僕に気付かなかったようだ。
良太郎を驚かせるのに失敗した僕は、後輩に八つ当たりと言う名の仕返しをした。
「健吾、しっかり前を見てチャリに乗れ!」
ビックリして自転車を降りた健吾は僕を見つけて呟いた。
「訓太兄ちゃん?」
知ってる顔を見掛けて、安心したのだろう。
健吾は途端に泣き出してしまった。
東京の片隅とはいえ、まだ九時前なので人の通りは多い。
道を行く人達が、何事かと怪訝な顔でこちらを伺っている。
無関心の街、東京ではなく、僕たちが住んでいた福岡県宗像市田島区だったら思うとゾッとしない。
『こら!訓太!なんばしようとや、きしゃん!子どもばイジメてから!』
近所おじちゃん、おばちゃんの説教が聞こえてくるようだ。
ところが健吾は、僕が思っているいる以上に、なんとも奇妙な言葉を口から吐き出した。
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