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「おう、健吾。どげぇしよったとか?元気にしとうごたぁね?」
健吾は幾分安心したように見えた。
クリクリの坊主頭を髪もないのになでつけて、パッチリした瞳で、二回ゆっくり瞬きをした。
本来なら、まだ高校生である為、何処かあどけなさが漂った顔立ちと言える。
コーヒーが予め三つ用意してあった事に、なんの疑問も持った様子もなく、健吾は話し始めた。
「俺は昔から料理人になりたかったけん……
だけんね、東京の有名な料亭で働き始めたんよ……
そしたらくさ、訓太兄ちゃん……
今日うちの店でフグ食べたお客さんが、倒れたとよ……」
「……」
良太郎の夢の話が、頭を過ぎり黙ってしまった。まさか……
良太郎はと言えば、さも当然とばかりに、健吾の話を促した。
「そりゃ大変やったね。
それで、どげぇなったと?」
「それでね……」
健吾は自分の体験を語り始めた。
「店も災難やったね。
なにも店で死なんだっちゃ良かろうもん……
でも、そのお客さんの死体が逃げたってどういう事ね?」
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