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古今東西を問わず名探偵とは非常識なものである。
というのは小説の中の話であって、現実の探偵がこれでは困る。
「おいおい、良太郎。お前本当に事の重大さが解っているのか?」
呆れた僕はすかさず問い詰めた。
良太郎と言う人間に慣れてなければ、黙ってしまっただろう。
少しムッとしたような顔で良太郎が福岡弁を忘れて言い返す。
「解ってるよ!金持ちの人が死んだんだろ?」
……まっ、こんな事だと思っていたが。
「良太郎……
あのねぇ、日本の経済界を支えてきた超大物が死んだんだぞ!」
ところが僕の発言を良太郎は気にしない。
「経済界を支えていたから何?
良いかい、訓太。この日本はね、ただの島だよ。陸地だよ。
御厨さんが日本の地盤を支えているわけじゃない。日本を支えているのは、地球だよ。
経済にどんな影響を与えていても、僕たちになんの関係があるんだい?
僕たちみたいな、低所得階級の人間に、彼の死がどんな影響を与えてくれると言うんだ?
明日、枕が札束に変わっているとでも?
彼の遺産が、全国民に配れるとでも?
精々、物価が上がるか、下がるかくらいなものさ」
良太郎はさも当然と言わんばかりに答えた。
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