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……確かにそれはそうなのだが……
「……僕が言いたいのは、日本人皆が騒ぐ大事件だと……」
僕は極めて常識的な事を言っている。
しかし良太郎の自信に満ちた喋り方と、勢いに負けて僕の言葉は飲み込まれる。
「マスコミが勝手に騒ぐだけだよ……
それは、皆興味はあるだろうさ。
だからって何もしない。
する気もない。
何かしたくてもやり方なんて解らない。
何がしたいかもわからないんだから……
マスコミに踊らされ、日本じゅうが四苦八苦するなんて、ありえないよ。
一番可哀想な被害を受けるのは、家族と健吾の店くらいさ」
確かにそうだ。
しかし僕が言いたい事はそれとは少し違う……
「そうだろうけどね、それだけの大人物なんだ。
殺人の可能性があるかもって事だよ。
遺産だってどれだけあるかわからない。
ライバルだって多いし、会社の経営の仕方もかなり、際どいものだそうだ。」
良太郎は呆れたように言い切った。
「何を今更……これが殺人なのは、解りきった事じゃないか。
そんな事当たり前だろ?
ゾンビは自らゾンビになんてならないよ。他人に盛られたのさ。
呪いの粉をね」
沈黙の長さに絶えきれなくなる前に、良太郎は喋り出した。
この事件の未来を見通したような、不吉な言葉を……
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