御厨家の人々 (翠婦人の長い長い愚痴)

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良太郎は、まるで物分かりの悪い子供に、根気強く諭すかのような、人を小馬鹿にしたような態度で、話始めた。 僕は翠婦人を怒らせるのではと、内心冷や冷やしながら良太郎の話を聞いた。 「いや、ですからね、僕が言いたいのは、料亭のような人目に付きやすい場所で、わざわざ殺人を犯す理由も、今殺さなければならなかったのかもわからないんです。 当然御厨氏がお元気なら、奥さんである、あなたが今現在お金に不自由する事はないんです。 確か御二人の息子さんも、それぞれ、高い役職に就かれていましたよね? 高いお給料をもらっているわけですよね? あなた方三人には、わざわざあの時、あの場所でリスクの高い殺人を犯す必要があるように思えないのです。 勿論、借金をしていたり、影で悪い事をして、揉み消したりしたいなら、話は別なんです。 しかし動機を『お金の為』と一本に割り切る事なんて、まだ出来ないんですよ。」
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