御厨家の人々 (翠婦人の長い長い愚痴)

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翠婦人は気を取り直し、また話始めた。 「ええ、そうね、銀座の方にクラブを経営されていらっしゃるそうですよ。大変繁盛しているようです」 喋り方が丁寧になったので、また話を聞く態勢を作った。 「直正さんについてはこれくらいでよろしいですか?」 翠婦人はこの母子の話はもうごめんとばかりに言った。 僕は翠婦人と二人で探偵を見つめた。良太郎は、可能な限りの爽やかな笑顔――と本人が思っている顔――で答えた。 「ええ、結構です。事件があった日お店にいたのは直正さんと……」 翠婦人は、また丁寧な言葉で話し始めた。 「次男の藤川直素と私です。主人を入れて四人ですね。時々主人は家族で食事がしたいと言って皆を集めるのです」
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