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正式な形で依頼を受けた僕達は、翠婦人に新しいコーヒーを注文した。
先に頼んだコーヒーの上の氷は既に泡になり、二層の液体が入ったグラスが、不味そうに汗をかいているだけだった。
翠婦人は今度は少し新しく来たコーヒーを一口だけ飲んで、姿勢を整え、また話を始めた。
「主人が居なくなって、と言えば良いのかしら……
主人が居なくなってから、私達の家の近くで、主人の目撃談が、私達の耳に入るようになったんです……」
翠婦人は混乱を隠せない様子で、上目遣いに僕達の反応を伺っている。
僕は驚いて、翠婦人に、聞き返した。
「えっ?あの……それは……どういう事ですか?」
落胆した様に翠婦人は説明を始めた。
『やっぱり信じてもらえないのね』と顔に書いてあった。
「いえ、ですから……
順を追って説明します。
事件の翌日、私達の家の付近で、主人が目撃されたのです」
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