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良太郎の外面の良さに騙されて、翠婦人は安心したように話し出す。
こっちの身にもなってほしい……
「次に主人が目撃されたのが……目撃って変な言い方ですが……
その翌日の七月十五日の早朝、多分七時前だそうです。
自宅から二キロ程離れた場所にある、旅行代理店の店長が、出勤する車の中から主人を見ています」
翠婦人は、コーヒーと氷が溶けて出来た水の層を、ストローで掻き混ぜながら言った。
「運転に集中していた為でしょうか?それともまだ寝ぼけていたのかもしれません。
出勤ラッシュの為に渋滞していたそうで、主人に挨拶しようとしたけど、車の外に出るわけにはいかず、とても挨拶など出来る状態ではなかったそうです。
主人が料亭で倒れ、遺体が消えた事に気付いて慌てて振り返ると、主人はもう居なくなっていたそうです。
もう既に主人の遺体が消えた事はニュースになっていたものですから、心配になり私に、と言うか直正に連絡して来たんです」
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