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「直正は父親の死体が行方不明だというのに、その前の晩、遅くまで飲み歩いて、酔い潰れていて、起こしても起きませんでした。
それで私が伝言を預かったんです。
勿論、直正にその伝言は伝えていません。
どうせあの男は私の話など聞こうとはしませんから」
翠婦人はイライラを押し殺した様子で言った。
僕はメモ係りの宿命を果たす為、仕方なく質問をした。
探偵助手とはそういうものなんでしょうけどね……
「その旅行代理店さんは、やっぱり御厨グループの……」
翠婦人は短く簡潔に答えた。
「ええ、子会社です」
「その旅行代理店さんが御主人を見掛けたのは七時前に間違いありませんか?」
「ええ、ビックリして、時計を確認したそうですから」
翠婦人は僕の質問を予測していたかのように、すぐ答えた。
良太郎はただ頷いている。『今の所は、探偵助手として合格だ』と顔全体で言っている。
殴りたい……
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