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導かれるままに愛姫の部屋に足を踏み入れた。
床の間に飾られた掛け軸や、活けられた花に人柄や知性が見える気がした。
「どうぞこちらへ」
畳の上に腰を下ろすと、姫は漆塗りに美しい蒔絵が施してある化粧箱から白粉を取り出した。
侍女はどこにもいない。
「愛姫様自らそのようなこと、お言葉に甘えてしまいましたがやはり自分でいたします」
同じ妻であるとはいえ、愛姫様は正室で、あたしはただの側室だ。
それ以前に大名のお姫様である。
そんな方に百姓のあたしが世話を焼いてもらうわけにはいかない。
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