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香野は辺りをキョロキョロと見ていた。どうやら定男さんが逃げた痕跡を探しているようだった。
「この土は足跡がつきにくいですね。
おや、あそこの草、踏まれたあとがありますね。行ってみましょう」
香野がそう言って歩きだした。私と白川さんは香野の後を着いて行った。
しばらく歩くと、けもの道のような細い道にでた。
「この道を白川さんはご存知ですかな?」
香野がそうたずねると白川さんはすぐに答えた。
「いえ、はじめて見ます。この山は広いですからね、知らない道があってもおかしくはありませんし、これはけもの道でしょう?」
白川さんがそう言うと香野が言った。
「では少し歩いてみましょう」
そう言うと香野はけもの道を歩きはじめた。
しばらく歩くと白川さんが言った。
「おかしいな…けものの糞がない、けもの道なら糞があってもいいはずなのに」
香野がそれを聞いて言った。
「ではこの道はけものが通る道ではない可能性があるという事ですね?」
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