第1話 資金稼ぎ

1/2
前へ
/4ページ
次へ

第1話 資金稼ぎ

雨がサァーと降っている。どんよりとした空、薄暗いグレーの雲から降っている。 鳥は軒下に隠れ羽を休め、猫は路地裏の喫茶店の前で寂しそうな声をあげていた。 喫茶店の中に客は居ない、居るのは喫茶店の店主らしき青年が、静かに煙草をくわえながら新聞を広げているだけだった。 喫茶店には、青年が新聞をめくる音と、壁掛け時計の秒針の音しか聞こえない。 突然、入り口のドアがゆっくりと開き、取り付けてあるベルが鳴り響く。 入ってきたのは、泥まみれの作業服を着た少年が一人。顔にまだ幼さが残る少年は全身ずぶ濡れで店に入ってきた。 「ただいま…」 カウンターで新聞を読んでいた青年は一瞬顔を上げ、少年の方を見るが、また新聞の方に目をやってしまった。 「おかえり…、祐一」 祐一と呼ばれた少年は、静かにカウンターの方にきて作業服の内側ポケットからベージュの封筒を取り戻すと、そっとカウンターの上に置いた。 「はい、給料。兄貴、頼むから使い込まないでね…!」 「馬鹿ヤロウ…、俺がいつ使い込んだ?」 新聞を読みながら青年は即答で返す。 「一昨日の夜にクラブで2万使い込んだ」 青年の即答に対し、祐一もまた即答で返した。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加