裏切りをひとつ

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「………ヒガンさん、どうしたんですか?」 ヒガンを見て、亜澄が首を傾げる。 「……………いや」 首を緩く振り、亜澄から視線を外す。 「?変なヒガンさん」 笑いながら、部屋に案内する。 「ここです」 亜澄に案内され、ある部屋の前に着く。 ヒガンは特徴のない、どこにでもあるドアを開けた。 「今は何も置いてないけど、休みの日に買いに行きましょうね!」 亜澄の言う通り、何もなかった。 あるのは窓から差し込んでくる光だけ。 「布団は後で持って来ますね」 「もう持って来た…」 亜澄の後ろには、布団…………を持った響夜。 「……すまない」 ヒガンが頭を下げると、響夜は外方を向く。 「別にお前の為じゃない」 そう言い残して、部屋から出て行った。 (………………ツンデレか?) 苦笑して、布団を見る。 「兄は凄く優しいんです」 自慢げに笑う亜澄。 ヒガンは小さく笑って、また布団を見た。 「…………いい兄貴だ」 小さく言った言葉は、亜澄の耳には届かなかった。 .
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