プロローグ

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 そして、新たな世界を見つける度に、新しい快楽と感情を求めていきました。  意味は、快楽と感情を得るため。  理由は、空っぽの心を満たしたいから。  動機は、芽生えた何かが私を構成していくので。  見つけたものはそれらです。そして、見つけたそれらに突き動かされて、私は箱を探していきます。  日の傾きが変わらぬこの世界において、時間の経過という概念はよく分かりません。  変わり行く季節、日の落ちた回数、秒という単位刻みで進む時計。何かの基準があり、それに伴い数えられるからこその経過。  しかし、この空間にそれらの基準はありません。  私自身が数え上げることは出来ますが、3度試して最高約5千秒で挫けました。そもそも、人が数え上げる秒単位に正確さはありませんので、無駄な徒労を行いました。しかも3度も。  だから私は、時間経過をおぼろげに捉えています。  本来なら、とてつもなく長い時間を過ごしたのかもしれませんし、ほんの僅かな時間だったかもしれません。または、私の捉えが正解なのかもしれませんが、それを知る術(すべ)は私にありません。  ただ唯一、この世界にも時の流れに似た移り変わりの基準が存在します。  世界自体の変化です。
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