プロローグ

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 最初にいたのは砂の海でした。  その世界で3つ目の箱に触れた後、柔らかだった砂の地面は硬質化し、世界は岩の大地にと変わりました。  いきなりの変貌に驚きはしましたが、まだ感情が発達していない私はあまり気にはしていませんでした。  次に変貌した時は、大地に巨大なクレーターが作られ。  その次は、クレーターは円柱型になり地面が抉られ。  その次は、出来た穴の側面に洞穴が掘られ。  その次は、円柱型の穴が3つに増え。  最終的には増えた穴は1つに統合。穴は深くなって、8層の階層構造が出来て現在の状況になりました。  私の活動範囲はその穴倉内となっています。外がどのようになっているかは分かりません。  2度外に出ようと試みましたが、上へ上がる道は見つけられませんでした。もしかしたら、上に行く道など存在しないのかもしれません。  天から注がれる光はありますが、穴倉や洞穴内はとても暗くて、意も知れぬ恐怖すら感じます。原因は不明。  私が探索を躊躇したのはその理由です。その理由がなければ、こんな陰気臭い場所などには止まりません。お日様の下に出て、日向(ひなた)ぼっこくらいしてやります。  出られない穴倉は牢獄。それなら私は、囚われの姫でも演じましょうか? いつか来る、白馬に乗った王子様という架空な存在を信じ、待ち続けてあげましょう。  そう思いながら私は、唯一日の当たる穴倉の中央で睡眠に移りました。  そうして、私は光に包まれたのです。  それが、牢獄から姫を王子様が連れ出した時でした。  白馬に乗っていませんでしたが、私の王子様は隣に現れたのです。
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