一章

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人の感情というものは目を見る事で意外と簡単に理解することができる。 鈍い奴や、感情の起伏が余り無い人間でも長い期間近くに居ればなんとなく読み取れる。 だが奴はなんだ? 目を見ても何の感情も読み取れない。 文字通り『空』なのだ。 身体が震えてくる。 全身の筋肉は強張り、顔からは血の気が引いていくのが分かる。 奴がナイフを振り上げる。 (ああ、ここで死ぬんだ) 唐突に思う。 周りの連中が止めようと動きだすが間に合わないだろう。 いつしか自然に目を閉じていた。
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