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「犬が、しゃべってる……」
僕の驚きなど気にすることもなく緋色は血姫と呼んだ赤犬の背を撫でながら笑う。
「血姫…食事の時間だ。思う存分腹を満たすといい。」
【フフッ不味そうだが、空腹なのが幸い。多少の不味は辛抱いたしまする……】
血姫は笑いながら眼前の化け物へと飛び掛かる。化け物はのけぞり
ドォォンッ
という激しい音と共に倒れた。その化け物の右腕を血姫は鋭い牙と爪を立てて咬みつき切り裂く。
《ギシャアァー!!!》
化け物の凄まじい悲鳴が辺りに響き渡る。必死でもう片方の腕で血姫を払い退けようともがくが血姫の鋭い爪は化け物の体にしっかりとくいこみ、化け物の動きを完全に封じ込めた。そして身動きの取れない化け物の喉元に喰らいつく。
《ギ…ギシャア……ァ》
それが化け物の発した最後の叫びとなった。化け物の喉元からおびただしい鮮血がほとばしり、その姿は化け物から肉塊へと変貌する。
食事を終えたらしい血姫(ケッキ)は口元の血を前足で拭い、主である緋色の元へと戻ってきた。
「良くやった血姫……心の臓は残してあるな?」
【はい主。いつも通りにございまする】
軽く頭を下げる血姫の背をゆっくりと撫でながら、緋色は自分の髪を何本か抜き取り血姫に与えた。
「これは、褒美だ。次も頼む……」
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