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古狸は今にも死んでしまいそうな悲鳴をあげる。
「俺をなめるな――狸よ。狐にお前が未だにアリオンと内通している事、全て聞いているのだぞ?」
フッと不敵な笑みを浮かべる緋色の手の中で狸は怒り狂った。
【くそっ!!あの馬鹿狐めがっ……次会うた時は尾を喰いちぎってくれるわっ!!!!】
本性をあらわにした古狸は、そう叫んだ直後“しまった!!”という顔で恐る恐る緋色に視線を向ける。真正面から瞳がぶつかる。緋色は不敵な笑みを浮かべたまま古狸にもう一度尋ねた。
「奴の居場所を吐け。これがお前がこの世で聞く最後の言葉になる前にな」
ナイフを更に突き付けられ古狸は観念した様子でため息をついた。
【アプリ地方の古兎(コト)という町にいるかと……わしが知っているのはそれだけだ】
緋色はその言葉を聞くとナイフを懐へしまい、狸を解放した。
「俺の気が変わらぬ内に、どこへなりと行け。そしてもう二度と悪さはするな」
古狸は地面を転げまわりながら一目散に森の奥へと走り、やがて深い闇に溶け込むかのように姿を消した。
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