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この世界には神から授かりし力があふれている。無から何かを造りだす力―“造力”と人は呼ぶ。力を持っているのが普通。だけど、ごく稀に僕のように何の力も持たない者が生まれる時がある―
“非造者”“不造者”などと呼ばれ人から哀れみ蔑んだ眼で見られる。
“僕は非造者だった”
降りしきる雨と微かな霧の中で、それは鮮やかな炎が揺らぐ。そのたびに耳を切り裂くような獣の咆号と白い閃光が目の前を走り過ぎる。
恐怖で動かないはずの僕の体は、いつのまにか自分の意志とは裏腹に眼前の光景を真正面から見る位置に動いていた。
目に焼き付いて離れない。その炎が。その炎の名は………【緋色】
《―僕はただ忘却を望む―》
過去も未来も僕には関係ない。そう、何の力も持たない僕は生きている価値すらない。そんな僕とこの世界全てを忘れたい。
《―僕はただ死を願う―》
いずれ訪れる安息の時を求めて。誰も悲しむ者はいない。力のない僕を哀れに思うだけだ。こんな僕とこの世界 全ての死を願う―
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