第二章【三巴炎と水獣の村】

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「いえ茜さん気にしないで下さい、ありがとうございます」  ルビィはにっこりと僕に微笑む。  僕に気を使って無理して笑っている。  すぐに作り笑いだと分かった。僕の周りで笑ってくれる人と同じ表情だったから。それでも僕は嬉しかった、自分もにこりと笑顔を返し足元に並べられている薪に手を伸ばす。薪は数本しか残っていなかった 「あ、もう薪のストックねぇな。ルビィさん僕ちょっと集めてくるから待っててよ」 「いえ、私が行きますから」 「大丈夫だって、たまには僕もルビィさんの役に立ちたいからさ!!じゃ行ってくる」  ルビィが制すのも聞かずに、僕は人差し指で頬をかきながら照れくさそうに笑い薄暗い闇の中へと消えた。                               ホォーホォー  夕闇の森の中、声の低い鳥の鳴き声が辺りを包みこむ。昼とは違い夕暮れ時の森は、この世のモノではない異形の化物でも現われそうな雰囲気が漂う。僕と緋色が出会った森も、こんな雰囲気の森だった。  一週間……か  この一週間の間、古兎に向かう道中、僕は緋色から様々な事を学んだ。
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