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僕はその天使に見とれてしまった。薄暗い森に似付かわしく綺麗なそれは人形のようで、まるで同じ生きものだと思えない。しかし、確実にそれは生きていて高らかに笑いながら僕に近づいて来る。
「ハハハ!おい、ミジンコよ。俺に臆しているのか?お前に聞きたい事がある……この近辺でこの世のものとは思えぬ美しい紅髪の男を見なかったか?」
天使はコツコツとブーツを響かせながら僕の顔前まで近づき、僕の身体は緊張のあまり強ばる。背丈は僕より十センチほど低かった。ゆっくりと腕を組み天使は僕を見据える。
「どうした…ミジンコ?お前言葉が話せないのか?ただでさえ下等な生き物なのに――クッ哀れだな」
近くで見るとさらに美しい……だけど
人を見下した物言い、蔑んだ瞳、傲慢なその態度に僕は我に返った。
「僕は下等生物でも…ミジンコでもない……」
僕は眼前の天使を睨み付ける。否、天使などではない。天使の皮をかぶった――
「なんだ、話せるじゃないか。なら話は早い……見たのか?見てないのか?さっさとその薄汚い声に耐えてやるから答えろ」
こいつは悪魔だ……。
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