間章【惨劇の町・古兎】

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 その路地裏に似付かわしくない一人の少女がいた。純白のドレスを身に纏い、白い髪はふわりとわた飴のようで地面につきそうなぐらいに長い。ぱっちりと大きな瞳の色は深い紅。十代半ばぐらいの背の低い小柄な少女だった。 「僕、お腹すいてるの?どうして?」 「僕達の食べ物……兵隊さんにあげて無くなったから――どうして?どうして僕達のお金、あげなくちゃいけないの?」  壁に寄りかかり、ぼろぼろの布を纏い痩せ細った少年に少女は声をかけた。にっこりと真っ赤な唇を吊り上げ少女は笑う。 「うふふふ、酷いわね。憎いわよね?この国で争う人間が……お姉ちゃんね、これぐらいしか持ってないけど。これ食べて元気になって」  少女は手に持つ朱色の木製の鞄の中から、小さな赤い包み紙を取り出すと少年の手のひらの上に乗せた。 「飴だ…ありがとう」  少年は包み紙を広げ、中から出てきた紅色の飴玉を口に入れながら笑った。 「飴なんて久しぶりに食べる……甘くて、とてもおいし――うっ、げぼっ!!!!」  少年は口から大量の血を吐いた。血は止まる事なくどんどん口から溢れ出て地面にぽたぽたと滴り落ちる。
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