間章【惨劇の町・古兎】

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 ぐっちゃ、ぐっちゃ!  と男の腹わたを拾って食べながら、次々と町の人々を喰らい始める。足を持ち上げ両方から一気に裂き、心臓のある左半身だけ口に入れると右半身は放り投げた。町から逃げようとする者から順番に踏み潰し殺していく。蟻を踏み殺すかのように人間達は呆気なく死ぬ。その光景はさながら地獄絵図のようだった。  少女は大広場の噴水の側に舞い降りると、噴水の周りを歌いながら踊り始めた。 「鳥がさえずり、木々は歌う。幸せの歌を♪この大地に生まれた事に感謝しよう。この大地を踏みしめる喜びを感じよう♪」  びちゃびちゃ!!  と少女の身体に深紅の雨が降り注ぐ。その雨を受けながら、少女は小鳥がさえずるような声で歌い、咲き乱れる花のように華麗に踊り続ける。くるりと身体を反転させて、手を叩き。またくるりと身体を反転させながら、足でステップを踏む。観客に笑顔を振りまきながら、その純白のドレスは真っ赤に染まっていく。 「出会い、別れ、喜び、悲しみ。どんな辛い事だって我慢できる♪あなたと出会えた喜びに比べたら♪あなたと会えない悲しみに比べたら♪」  踊る少女の足首を突然女性が掴んだ。貴金属を身につけた良家のお嬢様のようだった。
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