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その男を見た途端に、少女は花が綻ぶかのような笑みを浮かべて男に駆け寄り胸元に抱きついた。
「あいかわらず、踊りが上手だね。シュオン」
「うふふふふ。お父様に誉められると……凄く嬉しい」
シュオンという名の少女を抱きとめ、男はシュオンの真っ赤に染まった髪を愛おしそうに撫でる。
「この町には、壊者はいなかったようだね?残念だ……凄く残念だ。せっかく王まで殺したのにね」
「ええ、でも大丈夫。すぐに壊者は揃うわ……そして理想の世界が訪れる。私達【妖神族】と壊者だけの世界が。うふふふふふ。楽しみだわ……ねぇ、【アリオン】お父様?」
シュオンの頬にべっとりとついた血を舐めとり、アリオンと呼ばれた男は唇をにっと吊り上げながら、地に響くような低い声で笑う。
「ハハハハハ。ああ、楽しみだね……凄く楽しみだ」
血の海の中で紅龍のアリオンと、その娘シュオンは楽しそうにいつまでも笑い続けた。
~古兎編 完
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