第二章【三巴炎と水獣の村】

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 森を抜けると、視界が開け眼前に群青色の世界が姿を現す。それは巨大な湖だった。 「湖の向こうに壁が見える…」  湖の中央に白い壁が円状に広がっているのが見えた。                 水龍神に護られし水獣族の村――【朱庵】(シュアン)だ。                 僕と緋色は古兎について詳しい話を聞く為、ルビィと合流し一期の村、朱庵に行く事にした。一期の案内で森を抜け、朱庵へと続く湖にかけられた木造橋を渡り、村へと入った途端――僕は歓喜の声をあげる。 「うわぁ、綺麗だ」  村の中央には川が流れ、その川の先には見た事のない巨大な樹木が天高くそびえ立っていた。多くの水獣族が往来に溢れ、みな一期まではいかないが、美しい容姿をしている。色とりどりの花々が咲き乱れ、この村はまるで天国のように美しい場所だった。 「当たり前だ。俺の村だからな」  誇らしげに笑みを浮かべる一期の側に一人の老人が近づいて来る。頭から貴金属を身につけた真っ黒のローブを羽織り、木製の細長い杖をついた腰の折れ曲がった小柄な老婆だった。その老婆を見た途端、一期は驚く。
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