第二章【三巴炎と水獣の村】

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『大ばば様!!どうしてこんな所に!?神所へお戻りください。』 『一期や……。眼造でそなた達の姿が見えてのう。はよう、見せた方がよかろうと思うて来たのじゃ。』 その高貴な雰囲気を漂わせる老婆は、一期から僕達に視線を移す。 『わしは、この朱庵の水巫女を務めておる…柘榴(ザクロ)じゃ。おんしら、古兎に向こうておるな?…彼の地へ行ってはならぬ。あの地は【血の薔薇姫】に魅入られし町。恐ろしい事じゃ……ほんに恐ろしい。』 柘榴という名の老婆は眉をひそめ、恐怖で顔に無尽に広がる皺をさらに寄せながら、身体を震わせた。 「血の薔薇姫……?おばあさん、古兎で何があったか知ってるのか?」 聞きなれぬ単語に訝しげに僕は柘榴を見つめる。柘榴は杖を一期に手渡し、地面に座禅を組むかのように座った。 『話すよりも、己の眼(マナコ)で見た方が早かろうて……我がおおいなる眼を見よ。』 そう言うとゆっくりと瞳を閉じた。しばらくすると、柘榴の顔の皮膚が盛り上がり、表面からぼこぼこと無数の眼が浮かびあがる。
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