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もう死んで、この世にはいない母もよく泣いていた。友達も周りの人も泣いた。僕が造力を持たないと知った途端に同情して泣いた。だけど僕は、どんなに辛くて苦しくて悲しくても泣いた事はない。涙を流す泣くという、その行為が僕には理解できなかった。きっと僕が普通の人間と違うせいだろう。
「どうして……僕には造力ねぇんだろう?」
誰に問うでもなく、自然とそう呟く。その時だった。
「お前……“造”が無いのか……?」
本来返ってくるはずのない返事が返ってきて僕は驚いた。低く心地のよい渋い声。僕がもたれていた大木の反対側に声の主はいた。
「造のない坊主……ここは危ない、離れていろ」
先刻と同じ声を発するその男に僕は眼が釘づけになる。
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