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その眼は、あっという間に柘榴の身体全体に広がったかと思うと、
ぶわっ!!
柘榴の足元から一気に地を這うように眼が増殖し、その眼は古兎の方角を目指し、まっすぐに伸びていく。
「眼が増えた…!!?」
『驚いたか?これが、俺の大ばば様の造力――どんなに離れた場所でも見通せる千里眼【眼造】(ガンゾウ)だ。』
驚いて地面に広がる、ギョロギョロと動く眼球を見つめる僕に一語は空を指差す。
『よく見てみろ。今の古兎の有様を。』
ザザァー!!
と激しい風と共に、無数の眼は固まり一つの大きな眼となった。その巨大な眼が空を見上げた瞬間。僕達の頭上の空には、町の風景が浮かびあがる。いや、正しくは違う――町だった風景だ。粉々に破壊された家屋、元は人間だったモノの残骸、それに群がる烏や獣達。どす黒い空気に覆われていて…見ているだけで、その町の凄惨さが鮮明に伝わる。そこには、強い“悪意”が満ち溢れていた。
「これが…古兎?ひどい、一体誰がこんな事…。」
僕は吐き気を感じる程に気分を悪くし、蒼ざめた顔で瞳をふせ口元を掌で覆う。
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