第二章【三巴炎と水獣の村】

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『たった一人、生き延びた人間がここ朱庵へと逃れ上言のように呟いていた…血にまみれた深紅のドレスを着た一人の少女が異形の化け物と共に町を破壊している様を見たと。その少女を【血の薔薇姫】と俺達は呼んでいる。』 『異形の化け物だと?……悪霊か?』 今まで黙っていた緋色が口を開き、一期に視線を向ける。一期は首を左右に振った。 『いいえ、違います。俺も悪霊の仕業かと思ったのですが、あの町には霊気を一切感じられませんでした…お師匠様、見て分かったでしょう?あの町は危険すぎます。行くのはやめて下さい。』 『それはできない。俺はどうしてアリオンが俺の記憶を奪ったのか。自分は何者なのか――どうしてこんな身体になったのか。それを知らなくてはならない。』 頑なな決意を秘めた眼差しの緋色に、一期は眉を寄せ今にも泣きだしそうな顔をしながら叫ぶ。 『お師匠様の気持ちは分かります!だけど、これは罠なんです!!だって……アプリ地方国、王位継承を継ぎ今王座に座っているのは【ベルドゥス・アプリ・アリオン】。【神の右手】の名を持つ妖神族の長であり、お師匠様の探している紅龍のアリオンなんですから!!!!』 「え、妖神族!??」
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