第二章【三巴炎と水獣の村】

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僕は自分の記憶をたどる。【妖神族】とは、この世界で唯一、造力とは違う妖術を使う種族の名だ。【神の右手】と呼ばれる由縁は妖神族は水獣族同様、神の血を引く子孫だからだ。容姿は皆一様に白い髪・紅の瞳をしている。ただ、水獣族と違うことは妖神族は人間には友好的だということ。人間の社会に溶け込み、頭脳明晰な妖神族は財政界でも名をはせている者は多いと聞く。まさか、緋色の記憶を奪ったアリオンという名の人物が妖神族だとは思わなかった。僕は眼を丸くし、一期と緋色を交互に見つめた。一期はついに眼に大粒の涙をためながら緋色をまっすぐ見つめ懇願した。 『俺は、お師匠様が強いのは知っています。だけど!!アリオンは何を考えているか分からない危険です。お師匠様は命を狙われているかもしれない……そんな場所に行かせたくありません!!もし…もし緋色お師匠様の身に何かあったら、お、俺生きていけません!!だから――』 『すまない、イチ。それでも俺は行く。』 即座に突き放すような言い方で緋色は答える。一期は諦めたように涙をためた瞳を伏せ俯いた。 『分かりました。お師匠様がそこまで言うなら止めません。その代わり…俺も一緒に行かせて下さい。』
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