第一章【紅炎との出会い】

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 その恐ろしい声に思わず耳を両手で塞ぐ。風が吹き荒れ、地震のような地響きが同時に聞こえた直後――眼前にこの世のモノではない異形の怪物が姿を現した。 「な……なんだあれ!!?」  僕の眼前に現れたそれは、どろりと溶けた黄土色の肉体に目の下まで引き裂かれた大きな口。強烈な異臭を漂わせた巨大な化け物だった。  殺される――  その大きな口がゆっくりと開かれ鋭利な牙と血の匂いを感じた時、僕は死を覚悟した。化け物の八つに分かれた尾が顔前に迫ってくる瞬間――。  死んでしまいたいと願っていたはずなのに……  気が付くと僕は叫んでいた。 「た、助けてっっ!!!!」  その瞬間、僕の眼前に炎が揺らぐ。炎のように紅い髪の男緋色は背に隠した槍の武器で化け物の攻撃を受けとめていた。白い閃光と共に  ――ガキィーン――  と金属と金属がぶつかりあうような鈍い音が辺りに響く。 「平気か……坊主?」  緋色は化け物の攻撃を交わしながら背中ごしに僕にちらりと目を向ける。 「……まぁ、なんとか」
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